第37回|心配性すぎる私
井出 弥生(仮名)さん【55歳 奈良県】
事務員の娘が、勤め先の院長先生と結婚!
この度、一人娘が結婚いたしました。お相手は、娘が勤務しているクリニックの院長先生です。娘は看護師でもなく、ただの……と言ってはなんですが事務員ですので、最初は思わず「騙されてるんじゃない……?」と言ってしまいました(笑)。 医者を語った結婚詐欺かと思ったのです。本人が勤めているクリニックの先生なので、経歴詐称はありえないんですけどね。
この結婚に関して、私はいかに自分が『先入観』の塊であったかと思い知らされました。私たち夫婦は、主人も私もサラリーマン家庭に育ち、自分たちも会社勤めをして暮らしてきましたので、人生で『お医者さま』と結婚するのは、ごく一部の、『家柄のいいセレブな人たち』という印象があったのです。
「お医者様に嫁ぐ」と聞いたときは、失礼ながら家柄がずいぶん違うと思いました。およそ親戚中を探しても、お医者さまになった人も、お医者さまに嫁いだ人も聞いたことがありませんでした。
私の中での『お医者さま』は、『先祖代々お医者さまで、お金持ちで、豪邸に住んでいて、医者の家系以外を受け付けない排他的な感じで、子どもを絶対医者にしたがる』というイメージでした。
いわゆる大病院の御曹司……ドラマか何かの影響でしょうか。酷いですよねぇ。物凄い先入観です。
とにかく、普通の家庭しか知らない娘が苦労するという想像しか浮かんでこなかったのです。そんな私に、娘はとても冷静で、私の「こうだったら大変じゃない?」という妄想たちを、「お母さん、いいかげんにして」と一蹴しておりました。
留袖レンタルとお相手の彼に対する不安もあっという間に解消!
結婚式に関しても同じで、衣装だ、お食事だ、演出だ……といろいろなことを考えないといけないのですが、ついつい私が心配しすぎて、「こうだったら大変じゃない?」と言ってしまうので、最後の方には相談されなくなっていました……。
私たちの留袖のレンタルも、インターネットを通して「和匠」さんで借りるというので
「当日までに届かなかったら大変じゃない?」
「ペラペラすぎたらみっともないんじゃない?」
「お父さんのウエストが入るサイズがないんじゃない?」
などと心配する私をよそに、さっさと決めて、注文しておりました。
すべて、私の取り越し苦労にすぎないということが、どんどんわかってきました。衣装に関しては、式より前にはちゃんと素敵な留袖とモーニングが一式で届き、ウエストも無事におさまりました。返却も宅配で返送するだけで済み、あっけないほど簡単で便利でした。
娘の彼についても、ご本人とそのご家族にお会いすることで、あっという間に不安が解消されました。
彼の家系は『代々医者』でもなければセレブでもありませんでした。お父様は不動産業を営み、長男がそれを継いでいらっしゃいました。先方のお母様も、想像していた、ツンツンした有閑マダムのような感じではなく、どちらかというと庶民的な親しみやすい感じの方でした。
クリニックも、「大病院」という感じではなく、「町のかかりつけ医」として親身に相談にのるタイプでした。そして何より彼が、柔和さを絵にしたらこんな感じかと思うほどの優しい笑顔の持ち主でした。こんな物腰の柔らかい人が医療法人の理事長としてバリバリやっていけるのだろうか……と思いましたが、あ、また余計なお世話でしたね。
「私は、幸せになるから、大丈夫」
「だってねぇ、お母さんだって、あなたが生まれるまではおおらかだったのよ。あなたも、自分より守りたいものができたら、きっとわかるわ」と思いましたが、口にはしませんでしたけどね。
そうはいっても、長い結婚生活で悩んだり迷ったり、心配したりする時はきっとあるはず。そんな時は遠慮なくお母さんを頼ってね!