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女性の正装といわれる「留袖」から「振袖」や「紋付」など、着物にまつわるミニ雑学をたくさんご投稿いただきました。
教科書風に並べてみましたので、みなさん、参考にしてください。 -
- そもそも留袖(とめそで)とは
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- ■女性の正装「留袖」
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- 留袖とは?
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既婚女性の正装において、第一礼装は黒留袖になります。
黒留袖は黒地に染め抜いた五つ紋に、一越縮緬などの地紋のない生地を用いて作られる
伝統的な着物です。「五つ紋」とは、背に紋が一つ、前身頃抱き紋が一つずつ、両後ろ袖に
紋の染め抜きが一つずつあり、その計5ヶ所に家紋が入っていることを言います。他にも女性の正装には「一つ紋」や「三つ紋」などがあり、紋の数が多いほどフォーマル度が高くなります。生地の染めについて伝統的な染め方は、白地の生地に紅や藍の色を何度も
染め上げて黒色にします。最近では扱いやすいポリエステルが多くなっています。
色留袖についても、格は同じです。
- 留袖の歴史
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そもそも留袖という言葉は、日本の着物の伝統の中でどのような意味を持つのでしょうか。
袖という言葉は日本人にとって特別な意味を持っています。
他にも袖にする、袖を引く、袖を濡らすなど、たくさんの言葉があり、日本文化に深く関わっているのです。
昔、未婚女性は男性の求愛やプロポーズに対して、言葉で大っぴらに伝える事が良しとされていませんでした。
そこで気持ちを伝えるひとつのサインとして、袖を利用することを考えたのです。男性に対して好意を持っていれば袖を左右に振り、そうでなければ袖を上下に振ることで返事をしたのです。
現代に残っている恋愛での振る、振られるという言葉の語源です。
つまり、もう袖を振る必要のない既婚女性であることを示すため、袖を留めた留袖が礼装になったというわけです。
昔は袖を完全に閉じたものでしたが、江戸時代に帯の幅が広くなり身八つ口が出来て
現在の着物の形になったのです。その対極は未婚女性の正装である長い振袖です。
黒留袖は伝統的に江戸褄(えどづま)もしくは裾(すそ)模様とも呼ばれることがあります。
これは和服で褄と呼ばれる裾と袂(たもと)の下の部分だけに模様があることに由来します。紋付の黒留袖が女性の正装となったのは昭和、それも戦後になってから第一礼装としての地位が確立しました。
昭和初期の柄は現代のような華やかなものではなく、裾に低く柄を配したものばかりでした。
江戸という言葉は武家を換言したもので、柄の配し方が質素を尊ぶ武家の意味で江戸褄と呼ぶようになりました。
- 留袖の選び方
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留袖を慶事に着用する時は、裾模様も伝統あるおめでたい吉祥文様、松竹梅、鶴亀、御車
などが良いでしょう。できるだけ縁起のいい柄が描かれているものを選びましょう。出席する式での立場によっては金糸銀糸の刺繍や金銀の箔など豪華な技法が施されているものが相応しいでしょう。良く見るのは新婦の隣に座る仲人、新郎新婦の母親、既婚の姉妹、親戚などです。
黒留袖姿の女性が親族席にいるだけで、結婚式の雰囲気ががらりと変わりますので、
格式のある結婚式ならできるだけ着ていきたいところです。
親族の結婚式にも是非着ていきたい留袖ですが、自前で誂える(あつら)には少し躊躇してしまいます。
- レンタルのすすめ
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着物は誂える値段も高い上にお手入れも大変で、特に色が褪せてしまいやすいので注意が必要です。
レンタルならばそんな心配もなく体型が変化しても大丈夫ですし、その時々の季節に合わせたものを
選ぶことが出来ます。
季節に合った柄や、小物はその時々で変わりますので、黒留袖のレンタルは特におすすめです。
また、遠方での結婚式に出席する場合も着物一式の持ち運びは大変です。五つ紋にさえこだわらなければ、レンタルなら式のある地へ送ってもらうことも可能です。
さらに終わった後もそのまま送り返せばよいので移動も楽になります。
結婚式への出席は着るもの以外にも、準備や打ち合わせなどやることが沢山あります。
着物の準備は小物や風通しなどいろいろ手間のかかるものです。
着物の準備に煩わされることなく、式の準備に集中するためにもレンタルはおすすめです。
- ■留袖の歴史
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- 五つ紋の意味
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留袖とは女性の着る着物の中で最も格式の高い着物とされています。
黒留袖と色留袖があり、黒留袖には五つ紋と呼ばれる家紋をつけます。
この五つ紋をつけることによって最高の格式、第一礼装となるため、身内の結婚式などで着用するのが
一般的になっています。
また衿や裾が二枚に見える「比翼仕立て」というものにします。これは祝い事が重なると縁起が良いということと、重なりを持たすことで重厚感がでますのでより格式高くみえるということからいわれています。
これにより、どんな正式な場に出ても恥ずかしくない格の高い着物となります。色留袖は五つ紋を入れた最高級の格式のものから、三つ紋にすることにより少し格をあえて下げることもでき、
幅広い場に用いることができる着物となります。五つ紋とは、染め抜きのはっきりとした定紋を五つつけることをいいます。
「染め抜き日向紋」というのが最高ランクの紋になります。
背中につけるのが「背紋」、両胸につけるのが「胸紋(抱き紋)」、両袖につけるのが「袖紋」となります。
この紋にもそれぞれ意味があり、「背紋」はご先祖様をあらわし、「胸紋(抱き紋)」は両親をあらわし、
「袖紋」は兄弟・姉妹・親族をあらわすと言われています。
また、古くから紋には邪気を払う力があるとの言い伝えもあり、「背紋」は
特に背後からの悪しきものを払うという一説もあります。
家紋は実家の母方の家の紋を入れるのが習わしとなっています。
- 留袖の歴史を知る
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留袖の特徴は裾の部分にのみ柄があることと、袖が短いことが特徴です。
この袖の短さは、元々は振袖の袖を落したものなのです。
留袖の歴史は江戸の元禄時代にさかのぼります。
元禄時代以前は袖が短いものが主流でしたが、今と同じ袖の長さになったのが元禄時代といわれています。
この頃はまだ既婚者が普段着として着るという風習みたいなものでした。しかし、江戸時代末期から明治時代に入る頃に黒染めに五つ紋を入れ、裾のみに模様を配した着物を
既婚女性の式服(結婚式などの正式な場に着用する着物)とする習慣が庶民にも広まり、それ以来この着物を
主に留袖と呼ぶようになり、普段着から最も格式の高い第一礼装へと変遷していったといわれています。歴史的に見れば、着物の原型は「小袖」で、袖丈が短く脇のあいていないものでした。
そして脇を開け、振りを作った着物の事を「振袖」と呼んでいました。
この「振袖」は子どもの着物として広く着用されていました。子供は帯を使用せず、付け紐とよばれるもので
着物を押さえていたので、この付け紐を通すために脇をあけた着物が「脇明小袖」とよばれるものでした。
この時代に男女関係なく元服前の子供が着用していたのが「脇明小袖」です。その後、小袖が長くなるにつれて
動きにくさをなくすために振りをつけていきました。これが振袖にあたるものとされています。そのさらに後の時代になり、未婚の女性が好きな男性に見せる着物として振袖が着用されるようになりました。
しかし、結婚することによってその必要はなくなります。
そこで袖を短くするようになったのが留袖の歴史であると言われています。袖を切り落とすというのは縁起も悪く、縁を切るということにもつながりますので、袖を留めるとし、
そこから留袖といわれるようになった歴史があります。
またもうひとつの特徴である裾の部分にだけの模様。着物の裾から上部に向かって上品な柄が広がります。
この模様の入れ方を「江戸褄」といい、現在の一般的な柄となっています。