第47回|アラフォー娘が突如、結婚!?
主婦 富田 順子(仮名)さん【63歳 札幌在住】
30も半ばを過ぎた娘が身体を壊して、実家に戻り……
私の娘は私に似て器量よし(笑)。しかも、結構頑張り屋さんで地元の国立大学の理工科を出て、大学院まで行ったんですよ。高卒の私たちの子供にしては上出来ですよね(笑)。
そんな娘は一流企業に就職し、東京で働いておりました。
ところが、まだ入社したてにもかかわらず、結婚話が持ち上がりました。相手は地方の旧家の長男で、結婚したら会社を辞めて家の跡を継ぐことになっておりました。しかし、親の言うなりに事をすすめていく彼との間に次第に溝が深まり、結局破談になりました。
結婚はタイミングとよくいわれていますが、その後10年以上娘は東京で一人暮らしを続け、結婚のけの字も出てきませんでした。結婚しない分、仕事が順調なのかと思っていたら、30も半ばを過ぎたころから、腰痛、肩こり、頭痛に悩まされるようになってしまったのです。
長時間のパソコン作業に、精神的ストレスも加わったのでしょうか。結局、会社を辞めて実家に戻るという選択をせざるをえなくなりました。もちろん、周りの友達は、会社を辞めるのはもったいない、少し休んで治療したらいいとアドバイスして下さいました。
しかし、娘の意志は固く、気持ちを変えさせることはできませんでした。娘は娘なりに自分の残りの人生を考えていたのです。
アラフォーを目前にした娘が「突然結婚する!」と
そうはいっても、会社勤めをしていたころとは給料は比べ物にならないほど低く、実体は個人鍼灸院のアルバイト的なものでしたが、本人には昔の明るさが戻り、年金暮らしの私たちも次第に娘と一緒の生活を楽しむことができるようになっていました。
そんな矢先、娘が突然結婚すると言い出しました。よく聞くと、昔勤めていた会社の仲間が出張で札幌に来ており、娘も久しぶりに飲み会に出席したところ、その中に彼がいたのでした。
十数年ぶりの再会。二人ともアラフォーの独身。しかも、聞けば、その昔、彼はバリバリ働く娘に憧れていたということでした。
結婚はタイミングで、そういう時はとんとん拍子に事が進むとは、本当なんですね。あれよあれよという間に結婚の運びになりました。彼は転勤のない地域限定社員で、結婚を機に小さいながらも東京に家を建ててくれました。
私はあまりに事が早く進んでしまったので、彼に「もう少し娘と付き合ってから結婚を決めたほうがよいのではありませんか」と聞いたところ、彼は、「昔彼女の仕事ぶりはじっくり観察させてもらい、責任感、優しさともに申し分ないことは十分すぎるほど知っていますから」という返答でした。
それなら、私たちに異論のあるはずがありません。それに、このころ、主人に肝臓がんが見つかり余命があまり残されていないことがわかっていました。気がかりは結婚していない娘のことでしたので、優しい彼に娘を託せるのは願ってもないことでした。
結婚式は二人とも初婚とはいえ決して若くはないので、ごくごく近い身内だけで都内のレストランを貸し切って行いました。そうでなくてもかなり弱っている主人をなんとか飛行機に乗せて、東京まで来ることだけでも大仕事ですので、黒留袖といった礼装は何から何まで揃っているレンタルを利用しない手はありません。細かい手配は娘が全てやってくれました。
会場にはレンタルの着物と小物一式が宅配で届けられていて、本当に便利でした。式の最後に婿となる彼が、病気でかなり弱った主人に必ず娘を幸せにしますと誓ってくれたことが本当に嬉しかったですね。