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留袖にまつわる母と娘の愛情のこもった体験談をご紹介する留袖レンタル物語をご紹介いたします

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私の留袖レンタル物語

第10回|いいお嫁さんをもらえて良かったです

石崎 千恵(仮名)さん【64歳・主婦・奈良県】

社交的で人懐っこい末の息子が結婚

 怒涛の日々だった子育ても、3人目がこの度結婚し、ひと段落つきました。まぁ、末っ子は小さいときから意思の強い子で、自分がこうと決めたことは何があってもやり通す性分でした。大型バイクの免許もずいぶん反対したのですが、ある日乗って帰ってきていました。

 それでも「えへへっ」とにっこり笑えば「しょうがないなあ」と言ってもらえる得な性格でした。 末っ子は要領がいいと言われますが、息子は社交的で人懐っこく、いつも笑顔で誰にでも割と優しいので、バレンタインのチョコもたくさんもらってきていましたね。

 お兄ちゃんは大人しくておうちが大好きで親の言うことを聞くタイプだったので、よく同じ親からこんなに正反対の性格が生まれてくるもんだなぁ……と感心したくらいです。飄々としている末っ子は、どんなに怒っても堪えることなく、いつもケロッとしていました。

 ですがある時「あんたはうちの子やない。橋の下から拾ってきたんや」と言ったら、ものすごく真に受けてしまい、何かにつけ「どうせ橋の下から拾ってきたんやろ」と拗ねてしまうようになって、大変な時期がありました。
 息子にとって、家族はすごく大事で安心できる場所だったのに「本当の一員じゃない」と言われたことがかなりショックだったようです。もちろん冗談だったのですが、怒るにも言葉は選ばないといけないですねぇ(苦笑)。

 結婚するにあたり、彼女に「あの子はわがままやし勝手やから、ついていくの大変やと思うけど頑張ってや」と言うと、にっこり微笑んで「大丈夫です、お母さん。達也さんのそういうところもひっくるめて大好きですから。
 それに私、かなり忍耐強いほうですし」と言い切ってくれました。いつも息子のそばで微笑んでいるだけの可愛らしい印象しかなかった彼女の、芯の強さを見た気がして、この強さがあれば安心して任せられるかなぁと思いました。
彼女が三姉妹の長女というのも、相性がいいのかもしれません。
彼女の方がふたつ年下なのですが、息子を立てながら、その実、思う通りに動かしている感じがします。
多分息子は気づいていませんが(笑)。

久々に会った姪っ子が「留袖レンタル」で出席

 挙式については、「奈良といえば春日大社」ということで、神社でおこないたかったのですが、それは叶わなかったので、ホテルに春日大社の宮司さんを招いて、神式にておこないました。最近はドレスが主流みたいですが、やっぱり着物での式は厳かな雰囲気で良かったですよ。

 田舎では紫の幕をつけて家から白無垢の花嫁さんを送り出したりしていましたが、最近は花嫁行列もみませんね。昔からの風習がなくなっていくのは少し残念です。式には留袖を着て出席しましたが、やはり親せきとして出席するのと新郎の母として臨むのとは全く違いますねぇ。度目でしたが緊張しました。親せきもたくさん呼び賑やかな中でおこなえました。

 最近あまり会っていなかった姪っ子も出席してくれて、とても華やかに黒留袖を着ていました。「そんなの持っていたの?」と聞くと、「普段は結婚式に呼ばれても着物なんて着ないからどうしようかと思ったけど、神式って聞いたから留袖にしたの。着物って、素材や染め、柄などで『格』があるんですね。留袖レンタルにしたから、いろいろ教えてもらえて助かっちゃった」と言っていました。若い人には、そうやって着物文化の決まり事を教えてくれる人も必要ですよね。式は滞りなく済み、私も肩の荷がおりました。

 結婚するからと改まって話はしませんでしたが、息子にはいつも「ひとりで生きているんじゃないんだから、ちゃんと相手のことを考えなさい」と言い聞かせてきました。人間関係を作るのが上手な方だと思うので、あまり心配はしていないのですが、逆に誰にでも優しくて、いろんな女の子からアプローチされてしまうタイプなので、「これからは相手の女の子にも彼女にも誤解をされないよう言動に気をつけなさい」とは言いました。向うの親御さんとも仲良くして、些細な誘惑に負けず、ちゃんと家庭を守っていってほしいです。何より大事な『家族』のみんなが、いつでもいつまでも笑顔でいられるように。

留袖レンタル物語の目次(全47回)