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留袖にまつわる母と娘の愛情のこもった体験談をご紹介する留袖レンタル物語をご紹介いたします

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私の留袖レンタル物語

第12回|かわいい愛娘が嫁ぐその日が来るまで……

佐渡 マチ子(仮名)さん【62歳・主婦・愛知県】

すくすく素直に育った娘はまさに「小さなお母さん」でした

 名古屋に住む62歳の主婦です。一人娘を今まで大切に大切に育ててきました。娘は主人と私のまさに宝物でした。難産の上の出産ですからその可愛さもひとしおでしたね。娘もすくすくと素直なおだやかな子に育ってくれて、自慢の娘でした。

 私がインドア派で、日がなパッチワークをしているのを幼いころから見ていたせいでしょうか。物心ついた時から私の横にちょこんと座り、フェルトとボンドでぬいぐるみやタペストリーなどを作っては私にプレゼントしてくれました。好きこそものの上手なれとはよく言ったものですね。娘の手芸の腕はめきめき上達していきました。

 父の日には、教えてもいないのに自分で型紙を起こして、主人に手作りのハイビスカス柄のアロハシャツをプレゼントしてくれました。こんなことは朝飯前で、寒がりの私のために色鮮やかな毛糸でストールを編んでプレゼントしてくれたこともありました。私が手芸だけにかまけたときなどは、これも教えていないのに、私の見よう見まねで料理を難なくこしらえてくれる、本当にいつお嫁さんになっても大丈夫って太鼓判を押せるような、そんな娘でしたね。

 だから、大学を卒業した年に、「お父さんとお母さんに会ってほしい人がいるんだけど……」と娘から切り出された時も、ちょっと早いな、とちらっと思っただけで、あとは何の躊躇もありませんでした。この早急な決断には訳があることを私も娘も理解していたからです。

 主人が大して深く考えず友達と入った人間ドッグで、深刻な病が見つかったのです。この時倒れそうになった私をしっかりと支えてくれたのも娘だったのです。こんなしっかり者の娘のことです。

 主人が元気でいる間に、結婚式に新婦父親として出席して欲しい、との切実な思いがあったからこその英断でしょう。名古屋の結婚は派手な演出で有名です。
 男の子であればあらかじめ土地と家を購入し、新婦を迎え入れる準備をしておかなくてはならないのです。

 女の子の場合は、紅白幕を掲げた大型トラックに嫁入り道具を積んで、自宅の2階からお餅をばらまくのです。とにかくはっきり言ってしまうと、名古屋の結婚は、男女問わずお金がかかるのです。

 だから脇役の親たちの身なりは出来るだけお金のかからない手段を選ぶんです。例えば新婦母親の留袖。これはもう、クリーニングから何から全部やってくれる、至れり尽くせりの留袖レンタルに限る、とかですね。あくまで主役は娘たちなんですから。 こういう背景があるからこそでしょう、主人は自分が病だと分かってからも、身体の動く限り働こうとしました。

娘の婚約者となる男の子は絵にかいたような好青年でした

 さすがわが娘の選んだ結婚相手、絵にかいたような好青年でした。 主人も痩せて落ち窪んだ目に、満面の笑みを讃えています。

 一瞬にして、私たちはこの青年に娘を託すことを決めました。 「おめでとう」  なんて気の早い言葉なんでしょう。 でも、私は2人にそう言わずにはいられませんでした。

だけど……。

 娘たちにはちょっと酷な言い方ですが、結婚生活はオフロードですよ。 決して良いこと、楽しいことばかりではないです。 問題に直面した時、夫婦で結束してしっかり話し合って、乗り越えてください。

 娘へは、とにかくたくさん栄養を取って、来たるべき妊娠・出産に備えてね。 いつ赤ちゃんを授かってもいいように……。

 お母さんは楽観しています。 また、たまには夫婦喧嘩もあるでしょうが、それもほどほどなら人生のスパイス。 大丈夫、自分の思った通りに生きていきなさい。

お父さん、お母さんがついてるよ。

留袖レンタル物語の目次(全47回)